遊☆戯☆王

遊☆戯☆王
【第1話あらすじ】
童実野高校に通う武藤遊戯は日々、学友達から虐められていました。
しかも、不良学生の牛尾が彼に目をつけ、虐めっこに暴行した挙句
その報酬に大金を要求してきた為に、力の無い遊戯は窮地に陥ります。

解決策を試案しますがどうにかなる訳もなく、半ば諦めて遊戯は
“千年パズル”を解き始めました。そして、解いた者は悪を裁く
正義の番人になると伝えられるこのパズルを、彼は完成させたのです。

その夜、牛尾の前に再び現れた遊戯の眼光は鋭く、口許に不敵な笑みを
浮かべており、明らかに普段の彼とは様相が違っています。しかも、
遊戯は牛尾に、交互に自分の手の甲に札束を乗せそれをナイフで
突き刺し、刺した金を得られるという“闇のゲーム”を挑みます。

金に目が眩みゲームに挑んだ牛尾でしたが、やがてその欲望は暴走し、
彼は全ての金を奪う為に、遊戯に向かってナイフを振り下ろします。
しかし、ナイフは空を切りルールを逸脱した牛尾は罰ゲームによって、
全ての物が金に見えてしまう欲望の虚像に捕らわれるのでした。
【ジャンル】
バトル
【作者】
高橋和希
【出版社】
集英社
【掲載誌】
週刊少年ジャンプ
【掲載期間】
1996年~2004年
【巻数】
全38巻(新書版)
全22巻(文庫版)


2つの心の友情と成長

第5回にわかな漫画レビューは『遊☆戯☆王』がテーマです。
連載が終了して10年がたった今も尚、シリーズ最新作『遊☆戯☆王 アーク・ファイブ』のテレビ放映が開始され、
それに伴い本作に登場したカードゲームをモデルにした『遊☆戯☆王 オフィシャルカードゲーム』にも
ペンデュラム召喚という新しい戦略が盛り込まれる等、次々に新しい動きを見せている人気シリーズ作品の原点です。

主人公である武藤遊戯は大人しい本来の人格と、“闇のゲーム”で悪を裁くもう1つの人格、合わせて2つの心を持つ少年です。

大人しい性格の遊戯(表の遊戯)は内向的な性格で、学校の成績は悪く力もない為、頻繁にトラブルに巻き込まれてしまいます。
一方、もう1人の遊戯(闇遊戯)は世に蔓延る悪人達にゲームを挑み、圧倒的な戦略で相手を打ち負かし裁きを下すヒーローです。
これだけでは表の遊戯は闇遊戯に劣っているように感じますが、表の遊戯は友達の為なら傷つくことを恐れず行動する勇気を
持っており、闇遊戯は誇り高い性格が災いして、そのプライドが彼にとって大きな枷になってしまうことがあるのです。

それぞれ違った強さと脆さを持つ2つの人格は様々な出来事を経て、やがて協力し互いに信頼し合うようになっていきます。
表の遊戯と闇遊戯、そして彼らの仲間達との結束が“闇のゲーム”に勝利する為の強力な武器となり、様々な戦いを経験することで
2つの心はそれぞれに違った成長を遂げていき、それが物語に大きな影響を与えていくのです。

文字通り心で繋がる2人の主人公が織り成す友情と成長の物語を是非お楽しみください。


戦略と迫力に満ちた“闇のゲーム”

本作のもう1つの肝となるのが闇遊戯が行う“闇のゲーム”です。これは私欲に走ったり、他人を傷つけたりして
他人の心の領域に踏み込んだ者とゲームを行い、敗北者にその者に相応しい“運命の罰ゲーム”が下される恐怖の戦いです。
“運命の罰ゲーム”を受けた者は幻想に呑まれたり、魂を奪われたりしてしまうので、まさに命懸けのゲームと言えるでしょう。

闇遊戯はチェスやテーブルトークRPGのようなゲームは勿論のこと、ダイスやコイン、果てはヨーヨーまで、
ありとあらゆる物の知識やテクニックに精通しており、戦いを挑む悪人に相応しい“闇のゲーム”が繰り広げられます。

作中で闇遊戯は様々なゲームに挑みますが、やはり最も盛り上がるのは本作の代名詞とも言えるカードゲームでの戦いです。
カードから魔術師やドラゴンが飛び出し戦いを繰り広げ、魔法や罠により二転三転するカードバトルは迫力満点で、
プレイヤー達の思惑と作戦が入り交じり、様々なカードの能力を組み合わせた攻撃の応酬は独特の魅力で満ちています。


“闇のゲーム”で暴かれる悪人達の本性、それを裁く闇遊戯の戦略とテクニック。命懸けの駆け引きからは目が離せません。


最後に

本作は謎や神秘性に満ちたストーリーも魅力です。その根源となっているのは武藤遊戯が持つ“千年パズル”をはじめとする、
古代エジプトから伝わる謎のアイテム“千年アイテム”の存在です。全7種類の“千年アイテム”は、それぞれ異なる能力を
持っており、物語を通じて闇遊戯は“千年アイテム”の所持者達と苛烈な戦いを繰り広げていきます。

“千年アイテム”はどうして作られたのか、アイテムの所持者達が語る“扉”とは何なのか、そして何よりも
表の遊戯が“千年パズル”を解いたことで現れた、過去の記憶を持たない闇遊戯は一体何者なのか。
様々な謎に包まれた物語は独特の重厚感に溢れており、それらの謎が迫力に満ちた“闇のゲーム”を通じて明かされていくのです。

また、2人の遊戯を取り巻く仲間達の存在も見逃せません。元々は遊戯を虐めていたクラスメイトの城ノ内克也。しかし、
ある出来事を経て遊戯の親友となった彼は肉体派で、ゲームの知識やテクニックは皆無、ミイラやお化けが大の苦手という
常に堂々としてゲームを挑む闇遊戯とは全く異なるキャラクターですが、それでも大切な者を守る為に悪戦苦闘しながらも
ゲームに挑み、勝利を手にする彼の姿は未熟ながらも成長していく人間の力強さを見せてくれます。

そしてもう1人、遊戯のライバルとして何度となく彼の前に立ちふさがる海馬瀬人。闇遊戯に匹敵するゲームの天才で、
時として冷酷、残虐にさえ思えるゲームテクニックを駆使する彼は、力強い信念によって自らの運命を切り拓いていきます。
闇遊戯と海馬瀬人、2人の戦略家が繰り広げるバトルは常に知性と荒々しさを兼ね備えており、最高の興奮を味わえます。
10年という時を経て尚、愛され続けるだけの魅力を持つ本作を是非お読みいただければと思います。

それでは第5回にわかな漫画レビュー『遊☆戯☆王』をお読みいただき有難う御座いました。
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